技能者が足りない──。こう叫ばれて久しい建設業界で、人手不足問題を象徴するような出来事が起こった。40年以上、高卒を受け入れてきた広島県の建設系職業訓練校が2024年度の開校を断念したのだ。
複数の専門工事会社が社員を送り込む建設系職業訓練校「広島建設アカデミー」は、2024年度の開校を断念した。入校者が0人だったからだ。アカデミーには、会員企業に入社した新規高校卒業者が自動的に入校することになっている。24年4月時点の会員は27社。24年度はこの全ての会社が、高卒を1人も採用できなかった。
「開校できなかったのは、アカデミーの設立以来、初めての事態だ」。アカデミーの理事長を務める福井建設(広島市)の福井正人社長はこう嘆く〔写真1〕。1980年に発足した、アカデミーの前身である「広島建設共同職業訓練協会」まで遡れば、40年以上にわたって高卒を訓練してきた実績があった。
アカデミーでは、座学や実技の一部を東広島市にある職業訓練センターで実施する。毎年春になると、訓練センター内が若者で活気づく。ただ、2024年の春は例年と違ってひっそりと静まりかえっていた
入校者が最も多かった1995年度には65人も受け入れていた。会員企業が50社以上だった時期もあった。しかし90年代後半以降は、バブル崩壊による建設市況の悪化などを背景に会員企業が倒産し、入校者も減っていった。アカデミーの事務局を務めてきた福井建設も、2003年に民事再生法の適用を受けた過去がある。
それでも福井理事長は「高卒の育成は建設業界の発展にもつながる」と強い意志で運営し続けてきた。少子化でそもそも若者が少なくなったここ数年であっても、入校者数は5人程度で安定していた。しかし、24年度はついに0人になった
若者が建設現場離れしている要因を考えなければ、いつまでたっても高齢化した現場は変わらない。